薬を使いこなす

(1)不謹慎かもしれませんが、私は生活上の何から何までダメといわれてまで長生きしたいとは思っていません。厳しく生活を制限された上で、さらに薬まで飲まされているという状態に耐えられないし、死んだほうがましだと思っています。せっかく薬を飲んでいるのだから、日常生活は自由気ままにする、という治療方法は絶対にダメですか?

医師により判断が分かれるところです。もともと医師側は、患者が少しでも生活の質を高められるように、つまり楽しい生活ができるように、配慮はしています。かといって自由気ままに生活すると、結果的には悲惨な生活が待ち受けていることは医師は現実の世界でよく見ています。したがって、好き勝手にやりたいと患者が申し出ても医師はなんとか説得しようとします。

しかし「死んだほうがましだ」とまで強いポリシーをもっているのなら、医師側も考え直さざるをえません。質問のように、自由気ままに日常生活を営みながら、薬を多く飲んで糖尿病をコントロールする、という方法で治療に取り組もうというのなら以下の5点をしっかりと守ってください。

  • 糖尿病についてしっかりと勉強し、主体的に判断できるようにする(本書のQ&Aは完全に理解する)
  • 通院は中止しない。血液データをいつも記録に残しておく
  • 結果的に家族に大変な苦労をかけることになることを理解しておく
  • 後悔しない
  • 責任を医師に転嫁しない

(2)薬は医師に指示されたとおりの時間にきっちりと飲まなければいけないのですか?

もちろんそうするのが原則です。

(3)薬を自由自在に使いこなせるようになれば、思う存分に食生活を楽しみながらも、糖尿病が悪くならない、ということも可能なのですね?

状況によりますが、不可能ではありません。糖尿病の治療の指標としての、早朝空腹時血糖値とヘモグロビンA1cを良好な数値にすることができれば、実は、必要以上に厳しい生活の制約をしなくてもいい、というふうに柔軟に考えることも可能です。ただし、ほんとうに薬を自由自在に使いこなせることと、糖尿病の数値に関する詳しい知識がなければいけません。また、こうした治療の道を選択するときは、仮にトラブルが起こっても、患者個人に責任が帰する、ということを念頭におかなければいけません。

(4)自由に生活しながら糖尿病を治療するコツは何ですか?

まだ薬を開始していないのなら、3~6ヶ月は通常の食事療法、運動療法を行ってください。するとヘモグロビンA1cがほぼ一定の数値で維持されるようになります。その数値を基準にします。

その状態から、自由に生活するけれど、この薬を臨時で用いるというのを1つずつ加えていきます。たとえば、「週に2回お酒を飲むけれど、飲酒の前に○○という薬を飲む」という具合です。その状態を1ヶ月続けたら、必ず採血して、ヘモグロビンA1cをチェックしてください。そしてその数値を判定したうえで、続行するか、修正するかを判定します。それをくりかえして、コントロール良好の糖尿病にするのです。目標はヘモグロビンA1cが6.5%以下であることです。

(5)週に3回は酒席を楽しみたいと思っています。それでも血糖値があがらないようにするにはどうしたらいいですか?

乾杯直前に「ベースン」という薬を1錠内服してください。そして1ヵ月後のヘモグロビンA1cをチェックしましょう。もし上昇しているようなら、乾杯直前の薬を「グリミクロン」に変更してください。そして1ヵ月後のヘモグロビンA1cを調べてみましょう。ヘモグロビンA1cの数値の変化を追跡しながら変更していくのがポイントです。ただし、「グリミクロン」を利用するときは低血糖発作には十分に注意してください。自分に責任が帰結することを忘れないように。

(6)生活制限をどんどんなくして、それに応じて薬を増やしました。その結果、血糖値は良好な数値を保っています。このままでいいのでしょうか?

薬を増やしているということは、すい臓への負担を強くしていると言い換えることもできます。今は良好な数値を保っていても、近年すい臓のインスリン生産能力が枯渇することが予想されます。自由な生活を営んで気がすんだら、できるだけ早く運動療法、食事療法にしっかりと取り組むようにしてください。

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