糖尿病の薬物療法に関して

(1)治療の最初からインスリン注射を行うことはあるのですか?

膵臓からインスリンがでなくなるI型糖尿病の場合はインスリン治療を最初から始めます。また、痩せ型で40歳以下の患者の場合や血液中に抗GAD抗体が認められる場合もインスリン注射を最初から行うことがありますが、それ以外、つまりほとんどのケースでは、インスリン治療を最初から行うことはありません。

食事療法と運動療法を行い3ヶ月たっても十分な効果が得られない場合のみ内服療法を始めます。十分な効果が得られないというのは、ヘモグロビンA1cが6.5%以下にならないという場合です。

(2)糖尿病の薬にはどのような種類があるのですか?

主として4種類です。

  1. 腸からのブドウ糖の吸収を遅らせる薬
  2. すい臓に働きかけてインスリンをしっかりと出させる薬
  3. すい臓から出た一定量のインスリンが細胞により強く働くようにする薬
  4. 合併症を予防または治療する薬

医師はその4種類を使い分けることを考えています。

それぞれの代表的な薬として、(1)はベイスン、グルコバイ、(2)はダオニール、オイグルコン、グリミクロン、(3)はアクトス、(4)はキネダック、メキシチールです。また、(2)と(3)の作用を併せ持つものに、アマリールという薬があります。薬の名前を覚えるのは大変ですが、「なんとなく聞き覚えがある」ぐらいには、なって欲しいものです。

(3)治療の初めから薬を使うわけではないのですか?

昏睡を起こしかねないような重篤な糖尿病ではない限り、いきなり投薬を行うことはまずありません。検査を繰り返し糖尿病の状態を確認しながら、食事療法や運動療法などの生活改善を指導していきます。

十分に食事療法、運動療法に取り組んでいるのに、ヘモグロビンA1cが6.5%を超えているときに、薬物療法を開始するかどうかを考え始めます。

(4)糖尿病の状態を知るにはどのようなことをしらべるのですか?

厳密には、一日の何時にはどれぐらいの血糖値になっているかという血糖値の日内変動の様子、インスリン分泌能力のチェック、尿中の糖分量、合併症(網膜症や腎症)の有無などを調べます。しかし、おおまかには、早朝空腹時血糖値とヘモグロビンA1cと合併症の有無ぐらいです。

(5)覚えておいたほうがいい薬の名前はありますか?

「ベイスン」「グルコバイ」「ダオニール」「オイグルコン」「グリミクロン」「アクトス」「アマリール」の7つの名前はぜひ覚えておいてください。これらを自由自在に使いこなすことが、医師にとっても1つの目標になっています。

(6)糖尿病の薬を使うときの全般的な注意点はどのようなものですか?

薬が効きすぎたときに低血糖発作をおこすことがあります。特に2種類以上の薬を組み合わせたときに起こりやすいので注意しなければいけません。低血糖発作の症状は、「なんだかフラフラする」「気分が悪い」という漠然としたものから、「冷や汗がでる」「動悸がする」などの症状があります。最悪の場合は意識がなくなり、そのまま死亡することもあります。

(7)医師が最初に投与しようとする薬としてはどのようなものが多いのですか?

一般的には、経口血糖降下薬を開始します。「グリミクロン」「オイグルコン」「ダオニール」などの薬が相当します。これらは膵臓に働きかけてインスリンを多く出させる作用を持っています。ただし、腎障害やウイルス性肝障害がある場合や手術を予定している場合は、インスリンの注射からはじめることがあります。

(8)糖尿病の薬と他の薬を併用してもいいのですか?

併用するときは、慎重にならなければいけません。血糖を下げる作用を増強する場合や減弱させる場合があります。その結果、低血糖発作をおこしたり、血糖値が下がりにくくなったりすることがあります。特に、血圧の薬やホルモン剤など長期間投与する薬との併用には十分に気をつけて、医師の指導を守るようにしてください。

(9)気軽に使える糖尿病の薬というのはあるのですか?

医師の指導下でなければ、医療用の薬は利用できませんが、比較的気軽に利用できるのは、炭水化物の消化吸収を抑えるタイプの薬です。薬名では「グルコバイ」や「ベイスン」がそれに相当します。このタイプの薬の成分は主に腸の中にとどまって作用するので、全身的な副作用が起こりにくいというイメージがあります。

(10)薬を一度開始したら、もうその薬を中止することはできないのですか?

そんなことはありません。ダイエットにきっちりと取り組んだところ、薬が不要になったという人はもちろんいます。

(11)炭水化物の吸収を抑える薬には、どのようなものがあるのですか。どんな飲み方をするのですか。ほんとうに効果があるのですか。副作用はないのですか?

薬名で「ベイスン」や「グルコバイ」というものがあります。食前に内服します。3食とも食前に内服することもあれば、1食だけ食前に内服することもあります。個人差がありますが、1日1回の利用でヘモグロビンA1cが0.3%ぐらい低下します。副作用としては腹部膨満感や放屁増加、軟便などが挙げられます。吸収されなかった炭水化物が大腸に送られるため、そこで発酵し放屁や腹部膨満感が現れるのです。ただし、この症状は2週間ぐらいでおさまるようです。他の副作用として、そんな薬でもあたりまえのように記載されていますが、発疹、肝障害、過敏症などが挙げられます。細かい副作用を列挙すればきりがないので詳細は他に譲ります。

(12)すい臓に働きかけてインスリンを出させる薬にはどのようのものがあるのですか。どんな飲み方をするのですか。本当に効果があるのですか?副作用はないのですか?

大別して2系統あります。

「スルホニル尿素系」と言われるものと「ビグアナイド系」と言われるものです。スルホニル尿素系の薬剤(「グリミクロン」「オイグルコン」「ダオニール」など)が一般的に利用されます。

ビグアナイド系には、稀ですが「乳酸アシドーシス」という副作用があり、死亡することがありますので、ほとんど使われなくなっていましたが、インスリン抵抗性(せっかくのインスリンが聞かなくなる状態)を改善する作用があるため、最近また利用されるようになってきました。ビグアナイド系の薬剤としては、「グリコラン」「メルビン」「ジベトスB」などが挙げられます。

(13)糖尿病の薬を開始したところ、体重が増えだしました。そんなことってあるのですか?

あります。膵臓からインスリンが分泌されて血液中のインスリン濃度が高まる結果、血液中の糖分が脂肪細胞内によく取り込まれるようになり、体重が増えだすことがあります。「グリミクロン」「オイグルコン」「ダオニール」などのスルホニル尿素系の薬剤で見られますので、そのような場合は、「メルビン」「グリコラン」などのビグアナイド系の薬剤に変更することがあります。変更すると体重が2kgくらい低下します。

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