糖尿病の合併症に関して

目次

命にもかかわる深刻な合併症

糖尿病が怖いのは「血糖値が高い」という症状そのものより、それに伴って起こる「合併症」が非常に深刻であること。糖尿病を長期間放置しておくと、網膜症、腎症、末梢神経障害が発症します。また、糖尿病患者が心筋梗塞や脳梗塞を発症する可能性は一般の人の4倍以上といわれています。

糖尿病と診断された時点で、これらの病気の危険性も同時に抱え込んでいるわけです。

(1)合併症って何ですか?

ある病気にともなって引き起こされる病気を「合併症」と言います。

例えば、胆のうの中にできた石(胆石)を放置すると、胆のうガンができることがあります。この状態を「胆石に胆のうガンが合併した」と表現します。 糖尿病を治療しないで放置すると、数年後にはさまざまな病気が引き起こされます。糖尿病があるために引き起こされた病気を「糖尿病の合併症」といいます。

(2)糖尿病の合併症にはどのようなものがありますか?

糖尿病を放置するといろいろな病気が引き起こされます。それらを合併症といいます。一瞬で命にかかわる合併症としては、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病性昏睡があげられます。すぐには命にかかわらない合併症としては、網膜症、腎症、末梢神経障害、白内障、緑内障、顔面神経麻痺、胃運動障害、壊疽、こむらがえり、尿失禁、尿閉、インポテンツ、膀胱炎、発汗異常、起立性低血圧、湿疹、皮膚炎、脂肪肝、歯槽膿漏などが挙げられます。

(3)糖尿病といわれていましたが、通院せず放置していました。最近、目が見えにくくなってきました。なにか関係あるのでしょうか?

関係あるでしょう。糖尿病性網膜症の可能性が高いと思われます。他に白内障、緑内障の可能性もあります。眼科で眼底検査を受けてください。もし、糖尿病性網膜症が始まっているといわれたら、糖尿病の治療に全力を集中してください。

(4)糖尿病だと必ず合併症が起こるのですか?

そんなことはありません。正しく治療に取り組んで良好な状態を保っていれば合併症が生涯起こらないこともあります。「良好なコントロールを得られていない」ような場合に限って、合併症が起こります。

(5)糖尿病と動脈硬化は関係あるのですか?

あります。動脈硬化はもともと年齢とともに徐々に進行していくものですが、糖尿病の場合は、早いスピードで進行していきます。

(6)糖尿病だと、なぜ腎臓や眼に障害が起こるのですか?

血糖値が高いままだと、血管の内側が凸凹になる動脈硬化が早いスピードで惹起されます。細い動脈ほど早くダメージが現れてきます。身体で最も細い動脈がたくさん集まっているのは、腎臓と眼です。したがって、その二つの場所には障害が起こりやすいのです。

(7)糖尿病にかかっている人の何%ぐらいが網膜症や腎症を発症するのですか?

罹病期間が20年になると、約80%の人に網膜症が発症します。また、同様に腎症は20年で30~40%の人に発症します。

(8)糖尿病性網膜症で失明する人なんて本当にいるのですか?

この日本で毎年約3000人以上の人が糖尿病性網膜症で失明しています。

(9)糖尿病性腎症で透析を行っている人は増えているのですか?

毎年約1万人以上の人が、糖尿病性網膜症のため新たに血液透析を行うようになっています。

(10)糖尿病で長年治療していましたが、腎症にかかって、ついに透析を行うようになりました。私は長生きできるのでしょうか?

透析が新たに必要になった人の約半分(50%)は、4年以内に死んでいます。

(11)糖尿病の父が意味の通じない話をしだしたと思うとそのまま倒れて眠ってしまいました。寝息を立てていますが、ゆすっても起きません。放っておいていいのでしょうか?

いけません。糖尿病性昏睡の可能性があります。血糖値が500mg/dl以上になったときに起こりやすい状態です。放置すると死んでしまう可能性があります。強くゆすって起きないようなら、大至急、救急車を呼んでください。

(12)糖尿病性昏睡はなぜ起こるのですか?

インスリンがなくなり、あるいはインスリンが作用せず、ブドウ糖が細胞内に入れなくなると細胞はエネルギー源として脂肪を分解しようとします。脂肪を分解すると分解産物として「ケトン体」というものができてしまいます。この「ケトン体」が、脳細胞を傷害して、意識がなくなるのです。

(13)最近、怪我をしてもすぐに化膿して、なかなか治りません。糖尿病のせいでしょうか?

あなたが糖尿病で、必要十分に低い血糖値を確保できていない(「コントロール不良の糖尿病」と表現します)であるなら、糖尿病のせいだといえます。糖尿病が続くと免疫力が低下して、傷が化膿しやすくなり、治りにくくなります。肺炎や肺結核、湿疹、口腔炎、歯槽膿漏なども免疫力低下の結果引き起こされます。

(14)糖尿病のままだと、糖尿病性末梢神経障害が起こると聞きましたが、どのような症状が出るのですか?

手足のしびれ、皮膚感覚の麻痺、こむら返り、立ちくらみなどです。また、下痢や便秘、インポテンツも末梢神経障害に関係します。高血糖による神経の「タンパクの糖化」や代謝障害、微小血管障害が原因です。

(15)胸痛が起こったことはないのですが、心電図をとった結果、医師に「心筋梗塞をおこしたことがありますね」といわれました。そんなことがあるのでしょうか?

あります。「無症候性心筋梗塞」と言われています。糖尿病の人に多いのが特徴です。

(16)糖尿病ですが、最近、起床時に瞼がむくんでいる感じがします。なにか関係あるのでしょうか?

糖尿病性腎症の始まりの可能性があります。また、糖尿病の薬の副作用の可能性もあります。

(17)糖尿病のままだと、なぜ下痢や便秘になるのですか?

高血糖が続くことにより自律神経障害が引き起こされます。その自律神経障害の症状として、下痢や便秘が起こります。

(18)肛門周囲や陰部が痒くなるのですが、それも糖尿病の症状でしょうか?

性感染症でなければ、糖尿病による自律神経障害のための発汗異常が原因かもしれません。汗の量が減り、乾燥してしまうことが関与しています。

(19)日ごろ、インスリンを打っている母が意識不明で倒れています。ゆすっても起きません。どうしたらいいでしょうか?

とりあえず、すぐに救急車を読んでください。高血糖による昏睡か、インスリンの打ちすぎによる低血糖性の昏睡かのどちらかでしょう。低血糖性の症状なら砂糖をなめれば回復しますが、本人の意識がないのなら手の打ちようがありません。どちらにしても病院での緊急治療が必要です。

あなたの糖尿病治療に関して、風本医師からのセカンドオピニオンを提供します

【無料】あなたの糖尿病状態をお知らせください。過剰診療が目立つ昨今ですので、直接の治療を施している担当医以外の医師からの意見、アドバイスは貴重です。風本医師からのアドバイスをお届けします。