サプリメント利用に関して
(1)サプリメントや健康食品に効果はあるのですか?
サプリメントの素材によりますし、また利用者の心構えも関係します。医療用で開発された薬ももともとは植物などから抽出したものが大半です。自然界に存在するものから成分を抽出して薬が開発されていくと考えていいでしょう。その自然界に存在するものを自然に近い状態で利用するのが健康食品やサプリメントです。
とはいえ、すべての人に効果が認められるわけではありません。医療用の薬のように、ほぼ確実に作用すると断定できるわけではないからです。ある人には効果的だったが、別の人にはまるで効果がなかったということもしばしばです。あくまで食事療法を補助する、というぐらいの考えで利用するようにしてください。
(2)サプリメントや健康食品に取り組むときの心構えを教えてください。
「あのサプリメントを利用したところ血糖値が下がりました」という話を聞くことがあります。医師としての立場で患者の血液データをみながらデータが確かによくなっているというのを確認できることもあります。しかし、同時にそのサプリメントを利用することにより、治療意識が高まり、並行して体重が減ったおかげで改善したと結論付けられることもあります。また、ある人に効いたサプリメントが別の人にはまったく無効だったということもあります(医療用の薬でもそのようなことはしばしばです)。
血液データでは、早朝空腹時血糖値とヘモグロビンA1cを必ずメモして置いてください。そして、あるサプリメントや健康食品を利用して、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後のデータの改善度をチェックしてください。最低3ヶ月は続けることが重要です。3ヵ月後にヘモグロビンA1cが低下していたら、有効であったと考えることができます。その結果、自分にピッタリ合うサプリメント、健康食品を見つけ出そうと考えてください。
(3)桑の葉のお茶やバナバ茶などが糖尿病に効くと聞きましたが・・・
炭水化物が腸内で分解されてブドウ糖になります。そのブドウ糖が腸から吸収されるから血糖値が高くなるのです。炭水化物のままだと腸から吸収されません。桑の葉のお茶やバナバ茶には、炭水化物の分解を抑える酵素(α2-グルコシダーゼインヒビター)が含まれていると言われています。他にもその酵素を含む植物はあるでしょう。
日本では桑の葉に対して地方が産業振興のために力を入れており、医学的にもその作用は確認されています。桑の葉のお茶が有効な人は、ヘモグロビンA1cが0.2~0.4ぐらい低下します。効いているかどうかは、便が緩くなるかどうかで判断します。炭水化物が消化吸収されないで、大腸に送られると、ガスが発生したり、便が緩くなったりするからです。
(4)昔、クロムが糖尿病に効く、と聞いたような気がしますが・・・
糖尿病患者に、ミネラルの一種であるクロムを投与すると耐糖能の改善が見られ、血糖値が下がります。そのことからクロム含有耐糖因子の存在が医学界で語られ、医薬品としての開発研究がすすんでいました。その後の研究では、クロムがかなりの濃度にならないと血糖値の低下が見られないことから、即効性を期待する医薬品としての用途は断念されました。
一方で、クロムにはエネルギー消費効率を高めることや善玉コレステロールを上昇させる効果があることが知られ、健康サプリメントとしては幅広く利用されています。善玉コレステロールを高めるためには、気の長い11ヶ月の連続投与が必要です。糖尿病の改善効果も長期間利用してこそ効果が期待できると言えるでしょう。
(5)野菜錠剤は糖尿病に有効ですか?
野菜をしっかり食べることは糖尿病の食事療法の大原則です。野菜の繊維質が炭水化物の消化吸収を遅らせてくれるからです。できるだけ食事で野菜を食べるのがいいでしょう。とはいえ、野菜の歯ざわりが嫌いだと言う人がいます。また、麺類や寿司を食べるときには野菜の摂取量が減ってしまいますし、外食では野菜の摂取量が減ってあたりまえと言える面もあります。そのようなときは食事前に野菜錠剤を利用するのも悪いことではありません。
(6)糖尿病のままだと脳梗塞の発症率が高くなると聞きました。脳梗塞だけはいやなのでなんとか予防したいのですが、何か役立つサプリメントはありませんか?
糖尿病患者は、たしかに脳梗塞を起こしやすいのです。予防方法は、動脈硬化予防と血栓予防の2面から考えなければいけません。動脈硬化を予防するには、善玉コレステロールを高める作用を持つクロムがいいでしょう。血栓を予防するには、青魚や海藻の成分であるEPA(エイコサペンタエン酸)がいいでしょう。EPAは血小板が固まるのを防止し血液をサラサラにするのに役立ちます。
(7)プラセンタ(胎盤成分)が糖尿病に効くのでしょうか?
まだ未確定です。プラセンタに含まれる成分にインスリン要作用があると言う医学報告はありますが、それが実際に人体にどの程度に作用するかなどがわかっていません。プラセンタは副作用がほとんど認められないのに、美肌効果や女性の体調を整える効果が著しいため、医療用、市販用を問わず普及しています。しかし、プラセンタに関してはまだまだ未知の部分も多いのが現状です。
プラセンタというのは、母体の糸球体内で受精卵を1人の人間に育てていくときの成長因子です。その成長因子の作用で、受精卵が細胞分裂して内臓ができ、筋肉ができ、骨ができ、神経ができ、脳ができて一人前の人へと成長していきます。膵臓に対する修復能力があっても不思議ではありません。副作用がほとんどみられないので、糖尿病患者の膵臓を回復させる目的で試してみる価値はあると思います。
あなたの糖尿病治療に関して、風本医師からのセカンドオピニオンを提供します
-
前の記事
糖尿病の心理状況に関して
-
次の記事
薬を使いこなす